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臨床獣医師のためのクリティカル・ケアのABC
何をどうしてどうするか?

∵ はじめに

この本は、臨床獣医師が、救急疾患を扱う際や、当直のための診断・処置を解説したものです。これを読めば、獣医学のプライマリケアの手順がわかり、実践的マニュアルとして使用できます。まさに臨床獣医学の緊急マニュアルです。日頃から、私が言うDr、Komiyamaのペット・イージー・プラクティスのエキスが多く含まれています。本書の特徴は、従来からある抽象的な表現から脱却して、実際に応用可能ことがらを、できるだけ判りやすく解説してある点です。医学は取り分け獣医学は観念的な言うなれば頭の中だけで想像して分類し、実際の第一線の臨床家はとまどうことが多くあったからです。

 

∵ 臨床獣医師の心得

臨床獣医師は、勤務中又はその現役を退くまでの生涯において、診療技術と診療態度のたゆまぬ改善が義務づけられます。人間の医学界では、医師の卒後臨床研修が必修化されています。我々の獣医界では残念ながら、そのかすれ声すら聞こえてきませんが、数々の獣医療への不信の続発や、飼い主の権利や意識の高まりによって、臨床獣医師を志す獣医師たちが考える臨床獣医師像と飼い主が求める理想の臨床獣医師像へのギャップが拡大しつつあるように思われることは危惧すべき事項です。

獣医療の高度化や専門化が進むこの近年、獣医学の6年制に伴って、若い獣医師の間には、早急に専門的な技術のみを身につけようとする傾向がありますが、それはそれとして良いとしても、忘れてならないのは、飼い主が求めているのは、安心して質の高い獣医療を受けられることであり、このことは「動物の病気は興味を持って診るが、飼い主にはあまり関心がない」といった獣医師への飼い主の不満は、このギャップを表しています。

このことは診療技術のたゆまぬ改善と共に、その高度な獣医学を学ぶには、それに似合う診療態度(飼い主への思いやり)の改善も必然となります。今後ますます飼い主のニーズは多様化し、医師は病気を治せばそれでいい、医学的に正しい治療をすればそれでいい、といった姿勢は通用しなくなるのです。

 

∵ 問診表について

1)基本となる問診表

2)科目別の問診表

∵ 病歴の聴取の方法

釈迦は人を見て法を解けと言うように、飼い主の理解度によってマニュアルの通りにはいきません。より理解がむずかしそうな飼い主には、二者選択方式を採用します。例えば、食欲はありますか?ありませんか?ありと答えたら、なに食べましたか?少しですか?普通ですか?多くですか?と単純にイエス又はノー方式にする。これを「どんな状態ですか?」と聞いてもなかなか要領を得ない場合があるからである。いかに効率的に役に立つ情報を効率良く得るかが問題です。

以外の盲点は、例えば、

転院の症例の場合、何の検査をしたか?その治療?その経過?その診断?は?
最後に動物病院へ行ったのは何時ですか?それはどんな目的でしたか?
過去の病歴や手術歴は聞くであろうが、外傷歴と麻酔歴が以外と聞き逃す。

 

∵ カルテ記載上の心得

POMR(問題志向型診療録)の診療録の書き方

カルテは治療記録のみならず、日々の体重・体温・その容態の経過・問題点のリスト・検査の結果・診断の結果・治療の方針と記録等ができるだけ簡潔に判るように書き込みます。できるだけPOMR(問題志向型診療録)方式の診療録の書き方をします。

基礎データ 種類・年齢・性別・体重・体温・体型・飼育歴・室内外・ワクチン歴
問題点リスト 異常な点をできるだけ多く見つける
初期計画 診断計画・検査計画・治療計画・教育計画
経過記録 主観的データ・客観的データ・評価・考察・方針・計画


獣医学には人医のように経過記録にてSOAPのSubjective data(主観的データ)は自覚症状がないので、認められた症状を記載します。Objective data(客観的データ)は診察時や観察所見や検査所見を記載します。Assessment(評価・考察)は異常の原因の成り立ちを記載し、Plan(方針・計画)はDx(診断プラン)・Rx(処方計画)です。その際にその各々の料金も各々書き込むようにします。カルテは治療の記録帳では、不十分です。

Subjective data(主観的データ)
Objective data(客観的データ)
Assessment(評価・考察)
Plan(方針・計画)はDx(診断プラン)・Rx(処方計画)

 

∵ インホームド・コンセント(説明と同意)の徹低

動物の医療は人間のように、最低限(例えば保険診療内の診断と治療)の基準の設定は、できることとできないことの問題と、考え方の問題等があり各々の病院でかなりの違いがあります。各々の病院でできることと、できないことの基準が飼い主はわからないわけです。何かを行う際の予後について、あらかじめ話さなければなりません。例えば手術の際、その麻酔や手術の危険性・成功率・その予後についてまた術後起こりうる合併症についてもあらかじめ話しておきます。ここでの問題は飼い主に納得して同意してもらうことです。ただ単に説明をすれば良いと言うわけではありません。

原則論は飼い主の望む方法での診断・治療を行うことです。そのためには、いくつかの方法を提案し、選んでもらうすなわち「複数選択方式」を採用することです。もちろんそれらを行うための費用についても、あらかじめ説明をする必要があります。

先輩獣医師(指導医)への病状の説明の方法の心得
 1) わからない疑問点を簡潔に述べる。
 2) 自己の感情を入れないよう努力する。
 3) 重要な点から聞くようにする。

指導獣医師に相談する際の心得
なるべく短く簡潔に、わかりやすく報告することが重要です。
 1)まずは動物の特徴(種類、年齢、性別―不妊手術の有無もー)を言う。
 2)来院理由(飼い主が最も心配している症状)の理由を簡潔に述べます。
 3)異常な問題点のリストアップを報告します。
 4)過去と現在の検査、治療の状況を説明します。
 5)異常な問題点のリストアップを報告します。
 6)その後、聞きたい質問を聞きます。

 

∵ 救急動物の診察の注意点

これは救急動物の診療に特に限ったわけではありませんが、救急動物の場合には特に重要です。まずは稟告(病歴の聴取)を聞いて、その症状にそって通常は、飼い主の目の前で身体検査をするわけですが、特に重要なのは、その症状が起こったことへの、心当たりがあるかどうかです。

動物の医学においてはこのことが、非常に重要です。なぜなら言葉を喋れない動物は、人間医学のように症候(お腹が痛い?胸が痛い?)では判断材料にならず、症状(下痢している、吐いた)にたよらざるをえないからです。

それらの心当たり?がない場合は、本当の病気?の可能性?が高くなります。なぜなら、いつもと同じ環境で、同じ食事をして、同じ行動をして変化があるからです。

まずはその病気(症状)が、単兆候性VS多兆候性かを鑑別すます。すなわち検査を必要とし、入院の必要があるかどうかです。例えば嘔吐をしている動物が、食欲があって、 元気であれば、単兆候性であり治療のみでOKと判断します。しかし嘔吐していて、元気なく、食欲不振があれば、ましてその嘔吐に心当たりがないとなれば、多兆候性と判定しよく調べて検査や治療しなければなりません。

例題その1
例えば「右の後肢を引きずる」との稟告では、その足を「ぶつけた」との訴えがあれば、外傷との関係を考え、こんどはその関係する病気の程度、合併症を調べます。例えば骨折、脱臼やその他、軟部組織の損傷(筋肉、腱、靭帯、血管、神経、関節等)を調べていきますが、「ぶつけた」とか「踏み外した」の訴えがなく「右の後肢を引きずる」とのことであれば、警戒すべきです。まずは「神経病」との鑑別から初めなければなりません。そのために神経の検査を覚えるべきです。

例題その2
例えば、「吐く」とか「下痢」の稟告でも、何も思い当たることがないで、例えば、いつもと違った食物を食べた、拾い食いをした、いつもより多く食べた、海や山に連れていった等の環境の変化があればそれを中心に疑いますが、まったく同じ環境で、同じ食事で、同じ量であれば、動物の体内によほどの変化が発生したと考えるべきです。まずは、その原因が胃腸管(GI―1)か胃腸管以外(GI−2)を鑑別しならればなりません。

 

∵ 救急医療(急性の病気)の原則(クリティカル・ケアの原理・原則)

急性の病気は診断より治療が重要(優先)です。
なによりもまずは体の安定を考え治療から始めます。その後診断します。この理由は診断している間に患者が死亡しないようにするためです。
慢性の病気は治療より診断が重要です。
まずは診断から始めます。原因がわからないで治療をしてもほとんど効果がありません。治療は原則的に病名によって治療を開始します。

 

∵ 若齢の犬猫への診察の注意点

3ヶ月以下の子犬に対しては、その入手先、その環境、食事の内容、回数、体重の変化、糞便の性状等の病歴の聴取が重要です。また必ず身体検査と糞便検査を行なうこと。その動物に適応した必要な予防接種、予防処置(フィラリア、ノミ等)の有無の説明、不妊手術の必要性、歯の健康、予防的手術、予防的検査について、そしてその種類によって発生する頻度が高い病名を告げ、その症状の起こり方の説明、予防法をあらかじめ告げ今後の定期健診の時期についての説明を行ないます。また身体検査では心臓の聴診が重要で、雑音があるか? による心奇形に注意します。食事の指導が重要で、今後の体重の変化の予測や、できれば躾や排便や排尿に関することにも言及すると良いです。

 

∵ 高齢の犬猫への診察の注意点

8歳以上の高齢動物は半年ごと以上の定期健診が必要であること、具体的に何の検査が必要かの説明をする必要があります。頻繁な体重の測定の重要性を説くべきです。何を調べれば何がどのくらいわかるかを説明します。歯石の問題、犬の心臓病、猫の腎臓病は特に重要と思われます。予防が治療に勝ることを理解してもらうべきです。また年齢によって食事を変える必要があること、犬種、猫種による罹りやすい疾患を特に調べるのが臨床に役立ちます。

 

∵ 精神的問題をもつと思われる飼い主への接し方

この問題で考えさせられる点は、どこまでその飼い主がそれらの問題を本当に持っているかと言うことであります。それらの判断は時として難しいものであります。まずは飼い主の言うことを、良く聞くことから始めます。飼い主の心の中で起こっていることを(たとえ納得がいかなくても)理解しようと努めること。この受け入れられるという体験だけで、飼い主はある程度落ち着きを取り戻すことが多いからです。

 

∵ 最もやさしい輸液療法のABC

◎ 輸液療法の適応
  4大適応症

  1. 脱水
  2. 手術
  3. ショック
  4. 下痢・嘔吐
  5. その他、火傷・利尿剤等の投与

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◎ 輸液療法の特徴とは?

  原因が解らなくても有効だが、元となる病気の原因を調べることが重要である。

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◎ 体重測定の重要性

  • 輸液をする前に測定すること
  • 必ず毎日測定すること
  • 毎日同じ体重計で測定すること
  • 正常・減少・増加の判定

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◎ 積極的な輸液療法の禁忌?

  • 肺水腫(脳水腫)
  • 浮腫
  • うっ血性心不全(適度に回復すれば十分)

◎ 過剰な輸液療法をしたら?

  • 脈拍・心拍数・呼吸数・体温に変動あり
  • 中心静脈圧・咳・浮腫に注意
  • PCV15〜30%・Hb5〜10g/dl
  • 総蛋白濃度3.5g/dl・アルブミン1.5g/dl

◎ 輸液療法の重要点

  • できるだけ頚静脈カテーテルを用いる
  • 低血糖があれば、50%のブドウ糖を体重2Kg当たり1mL、2倍に薄めて投与。

◎ 輸液療法のモニター法

  • 1日3回のPCV・TPの測定
  • 1日1回の体重・尿比重の測定
身体検査の要点  頚静脈拍動 / 体重 / 聴診
臨床検査の要点  PCV / TP / 尿比重

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◎ 輸液療法の実際

1)どんな経路で投与するか?
 「輸液剤の投与経路」

経口投与 VS 非経口投与
    ・皮下注射
・静脈内注射
・骨髄内注射
・腹腔内注射

2)どれだけの量を投与するか?
 「どれだけの輸液量が必要か?」
 これはどんな輸液剤を使用するかという事より重要である!
  ・必要な維持量とは?  40〜60ml/kg
  ・その根拠とは? 
      20ml/kg/日 + 1〜2ml/kg/時間(24〜48ml/kg/日)
     (呼吸からの排泄)            (尿からの産生量)

3)どんな輸液剤を投与するか?
 「どんな輸液剤を選ぶか?」
 ★ナトリウムとカリウムが最も重要
  一般的な輸液剤の種類

  晶質液の種類
   ・乳酸化リンゲル(L/R)―できれば酢酸リンゲルを使用―
   ・0.9%生理食塩液
   ・5%ブドウ糖
   ・乳酸化リンゲル+2.5%ブドウ糖

 ★なにが必要が?
  水分・糖分・電解質・アミノ酸
  糖分について 5%G=100kcal/500ml
  維持エネルギ-必要量(kcal)=60×体重kg+140

4)どんな速さで投与するか?
 喪失量と喪失時間による!
 必要なら
   ・犬で80〜90ml/kg/時間
   ・猫で50〜55ml/kg/時間

5)どんな時点で輸液を止める?
 輸液療法がうまくいった場合!
  水和状態が改善され動物の食欲や元気が出てきたら!
    状態によって25〜50%減少
    必要ならその後は皮下輸液

 輸液療法がうまく行かなかった場合!
   輸液を続けたら浮腫が生じた!
    →血液希釈の問題
         開始時のPCVより15%低下した場合
         開始時のTPより50%低下した場合
            →輸液は中止する
         その他の基準は?

              TPが3.5g/dl以下(但しA/Gが正常) 
              アルブミンが1.5g/dl以下の場合に適応

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◎ 脱水の判定の3大注意点

  • 肥満(脱水がわかりにくい)
  • 削痩(脱水のようにみえる)
  • 利尿剤の投与(利尿の状態にあり)

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◎ 脱水の評価は?

 身体検査所見
   ・皮膚の緊張度(頚部では行わない)
   ・いつも同じ部位で行う

 元の皮膚に戻るための時間は?
   ・12%の脱水で5〜10秒間を要する

 所見
   ・心拍数・呼吸速拍・脈拍・眼球の陥没
   ・急激な体重減少
   ・口腔粘膜の色調と乾燥度
   ・末梢部の体温低下
   ・毛細血管再充満時間
   ・性格の変化
   ・膀胱の触診
   ・臨床症状所見(PCV/総蛋白濃度)その他A/G比等

  末期はショック状態となる

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◎ 脱水の指標となる証拠は?

  • CRT
  • 心拍数・脈拍の状態
  • 口腔粘膜の色
  • 尿量の減少

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◎ 毎日の脱水の評価

  • 身体検査を行う
  • 皮膚の緊張度は同じ場所で行う
  • 同じ体重計で測定する
  • PCV/総蛋白濃度の測定

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◎ 最も簡単な輸液療法(レベル1)

 脱水の状態の表現
  軽度 :体重の4%
  中度 :体重の6%
  重度 :体重の8%
  激度 :体重の10%

◎ 脱水量の算定法

 急に体重が減少したら脱水をまず疑う
  例:脱水7%×10kg=700ml
  例:脱水10%×10kg=1000ml

■維持量(イヌ) ■維持量(ネコ)
 3Kg→100ml/Kg
 10Kg→75ml/Kg
 50Kg→50ml/Kg
 1Kg→80ml/Kg
 2Kg→70ml/Kg
 3Kg→60ml/Kg
 5Kg→50ml/Kg

◎ 維持量の覚え方

 小型の犬 100ml/kg
 猫 60ml/kg

 50Kg(犬)=5kg(猫)→50ml/Kg

 例:10kgのイヌ、6%の脱水
 (10kg×6%(0.06)=600m)+(75ml×10kg=750ml)=1350ml(75〜80%投与)

 例:3kgのネコ、8%の脱水
 (3kg×60ml)+(8%×3kg)=180+240=420ml

※レベル1の輸液療法の注意点
 L/Rを使用(重症の肝不全や血液量減退と高カリウム血症を除いて)
 または
 ソルデム1(L/R+5%G)を使用
 2日目よりブドウ糖を加える

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◎ 最も簡単な輸液療法(レベル2)

 ナトリウムで脱水のタイプを分類
 カリウムの補正を行う

◎ 脱水のタイプ分け(分類)

 Na=正常、>高い、<低い
 最も重要なNaの量で評価する

Naが正常(145〜155)  等張液:L/Rやソルラクト1
Na=155↑  高張液:5%G
Na=145↓  低張液:生理食塩液

◎ カリウムの測定の重要点

 食欲がある場合にはカリウム減量してもOK

増加(5.5) 0mg/dl
正常(3.5〜5.5) 10mEg/L加える
3.0〜3.5 20mEg/L加える
2.5〜3.0 30mEg/L加える
2.0〜2.5 40mEg/L加える
2.0以下 50mEg/L加える

◎ 代謝性アシドージスが疑われる場合

 (深くて早い呼吸、炭酸ガスを出すため)
 7%重曹を0.5〜1mL/Kg 20分以上かけて投与?

 重炭酸ナトリウムの測定ができない場合は?
   →BUNを用いる

軽度 BUN<100 5mEq/Lの不足
中度 BUN=100〜175 10mEq/Lの不足
重度 BUN>175 15mEq/Lの不足

※レベル2の輸液療法の注意点

  • ビタミンB複合体を1000mLにつき1mLを別ルートで投与
  • 食欲がない場合、10%ブドウ糖を投与
  • 嘔吐、下痢等の推定の不足量の2倍を加えて投与

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◎ 最も簡単な輸液療法(レベル3)

  • 重炭酸塩濃度の測定
    →重炭酸塩濃度(HCO)が14mEg/L以下
  • 塩基不足が−10mEg/L以下
  • 血液pHが7.2以下

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◎ 血液代用液の使用法

 TPが3.5↓(ただしA/Gが正常)
 アルブミンが1.5↓の場合に適応

◎ デキストラン製剤

  • その効果の利点は?
     L/R等→30〜60分で約70%間質に出て、浮腫を生ずる。
  • 有害作用として血液凝固系の障害があり。その程度は投与量に依存する。
  • 必ず電解質液と同時に投与!
     →体液の移動が過剰となり代償作用が消失してしまうから
デキストラン40

(低分子デキストラン製剤) 平均分子量 20.000〜40.000 
 ・血管床への移動を促進
 ・毛細血管の泥状化
 ・DICを予防
 ・尿細管に詰まり腎不全の原因となることありうるので、

 ゆえに腎臓に障害がある場合には使用しない

使用法
 ・2〜6時間(半減期2.5〜3.5時間)
 ・開始量10〜15mL/kg.IV
 ・総量は24時間で20mL/kgを超えないこと
 ・必ず電解質液と伴に投与すること(体液の移動が過剰となる)


デキストラン70 (できればこれを使用―現在未発売)

(高分子デキストラン製剤)平均分子量 10.000〜80.000 
 ・血管床への移動を促進
 ・毛細血管の泥状化
 ・DICを予防

使用法
 ・24時間(半減期24〜25時間)
 ・開始量10〜15mL/kg.IV
 ・総量は24時間で20mL/kgを超えないこと
 ・必ず電解質液と伴に投与すること(体液の移動が過剰となる)

 ・血糖値、ビリルビン値が上昇する場合がある

 ・血液交差適合試験に影響することあり

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◎ 輸血療法

 効果の高い長期的な治療とはならない

◎ 輸血療法の適応

原則1 初めよりPCVが15%、TPが50%以下になった時
原則2 PCVが20%、TPが3.5以下になった時
原則3 腹腔内出血が認められる時

◎ 輸血療法の実際

 例:10kgの犬、PCV10%
    目標のPCV30%→20%×2.2ml=44ml
    44ml/kg×10kg=440mlの輸血
    ※PCV1%=2.2ml/kg

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◎ ショック時の輸液療法 (通常の方法)

 失われた全血量の2〜3倍の輸液が必要

  • 最初の30分以内に30ml/kgを投与
  • 評価し、まだショックがあれば 次の15分以内に15ml/kgを投与
  • 評価し、まだショックがあれば 次の30分以内に30ml/kgを投与
  • 評価し、まだショックがあれば・・・繰り返す

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◎ ショック時の輸液療法 (専門的な方法)

 失われた全血量の2〜3倍の輸液が必要

  • 最初の10分以内に30ml/kgを投与
  • 評価し、まだショックがあれば 次の20分以内に15ml/kgを投与
  • 評価し、まだショックがあれば 次の10分以内に30ml/kgを投与
  • 評価し、まだショックがあれば・・・繰り返す

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◎ 血漿(プラズマ)製剤

自己製剤 人工製剤
血漿を冷蔵庫で保存
 ・21〜27日間有効
 ・-20℃で1年、-70℃で5年保存可
 ・投与量:5〜10ml/kg/時間
乾燥犬プラズマ(500円/kg)
 ・投与量:5〜20ml/kg、5ml/分以内

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◎ 高張生理食塩液

2大適応 ・血液減少性ショック
・頭部外傷
禁忌 ・脱水
・心不全
・腎不全
・高浸透圧状態(高血糖・高ナトリウム)

使用法
 ・7〜7.5%高張生理食塩液が最も良い?
 ・10%高張生理食塩液の使い方
     例:7ml+3ml(生食、デキ40等)
       7〜7.5%高張生理食塩液として4〜6ml/kg(最小2.5ml/kg)
       3〜5分以上かけてIV。

作用機序
 ・高張生理食塩液を静脈内に投与すると、血管内が高浸透圧となり、
  血管外から血管内への体液の浸透を促進するため。
 ※ゆえに脱水状態では、間質腔に水分が少ないため、禁忌となる。

 

∵ ショツク(外傷)における最初のABCDEの評価(救命救急処置)(1)

まずそのショツク(外傷)が生命を脅かすものかを判定します。
(もしすぐには「死」に直面しない場合には、適切な処置を施すことによって、続いて起こる可能性であった「死」からのがれることがあるからです。この時間帯はクリティカル・ケアのゴールデン・アワーと呼ばれます)

Airway (気道) その動物の呼吸は困難さがあるか?→気道の確保→酸素吸入
気道に何か障害はないか?→何か詰まっている?下顎の損傷?
咽頭や気管は無傷か?→視診と触診で確かめる
Breathing(気道) 呼吸困難はあるか?→気道の確保→酸素吸入
口腔粘膜の色は?→チァノーゼ→末梢の静脈は拡張?→酸素吸入
体位を変えて呼吸困難は酷くなる?→病変の位置を推定
Circulation(循環) 出血があるか?→体内?(胸腔?腹腔?)体外?動脈?静脈?
口腔粘膜の色は?→チァノーゼ→末梢の静脈は拡張?→酸素吸入
股動脈の脈の性状は?→弱い、強い、細い、数は?心拍と一致?
Disability (無力) 神経学的な損傷は?→その姿勢は?機敏?その反応性は?
疼痛に対しての刺激に反応?→各々の神経の検査は?
瞳孔の反応は?→拡張?収縮?左右同じサイズ?光反応は?
Examination(検査) 全出血はあるか?→悪化している?どこかに骨折?
腹部に疼痛はあるか?→病歴、穿刺、X線検査、腹部超音波
裂傷があるか?→その程度は?全身の触診

 

∵ 大きな気道の呼吸困難における救命救急処置のためのアプローチ(2)

大きな気道の閉塞それを除去すること     急激な腹部の圧迫
                             麻酔して直接閉塞を除去する
中程度の呼吸困難 → 酸素 → 麻酔をしない → 鎮静剤の投与と安静
  重度の呼吸困難 → 酸素 → 麻酔をする  → 確定的な治療をする
                               → バイパスを作る(迂回させる)
                               → 口から気管挿入する
                                  通常か小さい気管チューブ
                                  硬い導尿カテーテルを挿入
                                  酸素を送り込む
                                  気管チューブのスタイレット
                                  高周波換気法
                                  気管切開を行う

 

∵ 犬猫の肺水腫における原因追及のためのアプローチ(3)

肺水腫→  心臓が大きい   →心臓性肺水腫 →その心臓の何の病気か原因を追求する
        心臓が大きくない →非心臓性肺水腫→上部の気道の閉塞がある?(猫はまれ)
                                →短頭種症候群
                                →外傷や炎症
                                →大型犬の咽頭麻痺
                                →まれに腫瘍の発症
                                上部の気道の閉塞がない?
                                →まずは口内に感電の後があるか調べる
                                →神経病のための神経学的検査を行う
                                →頭部の外傷や痙攣発作は?
                                →行動や精神状態の異常は?
                                →低アルブミン血症はあるか?

 

∵ チアノーゼにおける原因追及のためのアプローチ(4)

チアノーゼのある部位を確認する
  →粘膜、皮膚 →何か酸化剤かアセトアミノフェンを投与したか?
           →病歴の聴取、身体検査、胸部X線検査にて病気を推定する。
           →動脈血の血液ガスを測定(数回の測定が必要で一様ではない)
             酸素分圧(PaO2)の低下→中枢性チアノーゼ
             酸素分圧(PaO2)の正常→末梢性チアノーゼ
             →心臓肺系の疾患は多くは、中枢性チアノーゼである
             →胸部X線検査で、間質性パターンがあれば中枢性を疑う
 →体の先端部→ ショツクや心不全の状態?
           →大動脈の脈があるか?
             →なければ大動脈血栓栓塞症や心不全
           ショツクや心不全の状態ではないか? 
             →ネフローゼ症候群や赤血球の凝集を疑う

 

∵ 発咳における原因追及のためのアプローチ(5)

まずは胸部以外に咳の原因があるか考える(例えば腹部膨満)
  →その咳は心臓が原因(心臓が大きい)か考える?
    →心臓の触診にての判定を心掛ける
    →心臓のX線検査にての判定を心掛ける
      →各々の心臓の病気の原因によって治療する
  →その咳は心臓が原因ではない?
    →気管がその原因と考える
      →気管虚脱
      →異物
    →気管支がその原因と考える
      →気管支炎
        →細菌、アレルギー、カビ、腫瘍、寄生虫
      →気管支拡張症
    →肺がその原因と考える
      →肺水腫
      →肺炎
      →腫瘍が原因?
      →肺門リンパ節症?
    →最終的には気管洗浄、気管支鏡が必要?

 

∵ 血尿における救命救急のための原因追求のための処置(6)

血色以外に臨床症状があるか?
  →ない場合は通常は上部の尿路系の疾患で、例えば腎臓とか尿管が原因である
    →X線や超音波で結石の有無、尿沈査及び、腎臓や尿管の形や大きさを調べる
  →ある場合が最も一般的で、通常は下部の尿路系の疾患である
    →通常二次的に起こり、頻尿、排尿困難等を伴うのが普通である
  →身体検査で点状出血や斑状出血が認められたら、全身性の凝固系の異常が疑われる
  →血色が認められる時期による判定
    →排尿初期の血尿は、前立腺、尿道、陰茎、膣が疑われる
    →排尿後期の血尿は、膀胱、前立腺
    →持続的な血尿は、腎臓、尿道、たまに膀胱と前立腺
  →排尿の際に血尿があり、膀胱穿刺にて血尿がない場合は、尿道、膣からの出血を疑う
    →尿道の出血は最近、外傷を受けた場合により多く認められる
犬で沈査で結晶尿がある場合は、結石形成の可能性は高いが、尿石症の診断にはならない
猫の血尿はストラバイト結石が多いが、尿道栓子が原因で尿道閉塞が起こる可能性がある
尿沈査で細菌、白血球、結石、酵母が認められれば、治療にために培養が必要である

 

∵ 猫における排尿困難救命救急処置(7)

病歴の聴取と身体検査→膀胱の触診
  →膀胱が硬い
    →膀胱穿刺して排尿させる
      →穿刺尿が血尿なら
        →カテーテルの挿入及び固定が必要
          →閉塞あり(尿道閉塞)
          →閉塞なし
           →尿検査と尿培養を実施する
             →異常なし
               →神経学的検査を実施する
                 →異常あり
                 脊椎の画像検査
                 →異常なし
                 腹部の画像検査

      →穿刺尿が薄い赤色の場合は
        →輸液して止血剤にて様子をみる
  →膀胱が大きい
    →膀胱を軽く絞る
      →排尿する
        →尿検査と尿培養を実施する
      →排尿しない
        →膀胱が硬いと同じ処置
  →膀胱が小さい
    →神経学的検査を実施する
      →異常あり
       →脊椎の画像検査
      →異常なし
       →腹部の画像検査

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